高齢者の水分不足・脱水対策|1日に必要な水分量と「飲めているか」を見る大切さを解説

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「最近、親がぼんやりしている」「反応が鈍くなってきた」。そんな時、つい認知症が進んだのかな、薬の影響かな、と考えがちです。でも実は、水分不足が原因になっていることが意外と多いんです。
理学療法士・介護施設管理者として介護施設で多くの高齢者の水分ケアに関わってきた経験から、高齢者の水分不足と脱水対策についてお話ししたいと思います。
高齢者の水分ケアが注目されるようになった背景
介護業界では少し前に「自立支援介護」という言葉が広まりました。その中で、水分ケアの重要性が大きく取り上げられたんです。基本的な目標として、1日1,500ml以上の水分摂取が示されています。
これより摂取する水分が少ないと、頭がぼんやりしたり、つじつまの合わない発言や行動をしてしまったり、排泄のトラブルが起きやすくなったりします。だから特に介護施設では、2Lくらいを目標にして、頑張って水分をとってもらいましょう、という取り組みが行われていました。
1日にどれくらいの水分が必要なのか
とはいえ、高齢者の方に実際に1日コップ10杯くらいの水を飲んでもらうというのは、なかなか難しいものです。現実的なところでは、1Lや1.5Lくらいを摂取量の目安にしていく、という状況が多いと思います。
1日の中で1Lの牛乳パック1本以上を飲むとなると、高齢者からすると結構な負担なんですね。実際に現場でもいろいろな声を聞いてきました。
「トイレが近くなるから飲みたくない」
これは本当によく聞く声です。水分を控えればトイレに行く回数が減る、という考えですね。気持ちは分かりますが、水分を控えることの方がよっぽど体に悪い影響があります。
「むくむから水分を取らない方がいいと思っている」
足や顔がむくむから、水分を取らない方がいいと思い込んでいる方も結構います。むくみの原因は人それぞれなので、自己判断で水分を控えるのは危険です。むくみが気になる場合は、まず主治医に相談していただきたいところです。
「むせ込むから飲みたくない」
飲み込みの問題で、水分でむせ込みやすいから飲みたくない、という方もいます。さらさらした水やお茶は気管に入りやすいので、嚥下機能が低下している方には負担なんですね。こういう場合はとろみをつけて対応します。とろみの濃さは人によって適切な度合いが違うので、言語聴覚士や看護師、主治医に相談しながら調整してください。
なぜそんなに水分が必要なのか「不感蒸泄」の話
「水を飲んだらおしっこに行きたくなるんだから、飲まなければいい」と思う方もいるかもしれません。でも、ここで知っておいてほしいのが「不感蒸泄」という考え方です。
人は何もしていなくても、汗や尿だけでなく、皮膚や呼吸からも水分が逃げていきます。これを不感蒸泄といいます。たとえば体重50kgの方であれば、尿とは別に750mlくらいが、普通に生きているだけで体から失われていく計算になります。
そう考えると、1.5Lくらいの水分を取る必要があるというのも納得がいきますよね。出ていく分を補わなければ、体内の水分はどんどん減っていってしまうわけです。トイレに行きたくないからと水分を控えても、不感蒸泄で水分は失われ続けるので、結局は脱水に向かってしまうんです。
何を飲んでもらえばいいのか
介護施設などでは、ほうじ茶がよく提供されています。カフェインが少なくて飲みやすいからですね。でも基本的には、糖分が多い清涼飲料水や、極端にカフェインが多いコーヒーなどでなければ、好きなものを飲んでもらっていいと思います。
もちろん、薬の飲み合わせで禁止されているものは避ける必要があります。たとえば一部の薬とグレープフルーツジュースの組み合わせなどですね。そういった禁止されているもの以外であれば、本人が「これなら飲める」というものを見つけてあげる方が、無理なく水分を取ってもらえます。麦茶、ほうじ茶、水、薄めたジュース、味噌汁やスープなど、いろいろな形で水分は摂れます。
水分を取るだけで元気になった実例
介護施設で実際にあった話です。それまで全然水分を取っていなかったご利用者がいました。ぼんやりしていて覚醒が悪く、反応も鈍い状態でした。
そこで水分の摂取量をきちんと確認して、少し無理をしてでも飲んでいただくようにしたんです。そうしたら、徐々に反応が良くなって、元気になっていく姿を見ることができました。
ぼんやりしている高齢者を見ると、つい「認知症が進んでしまったのかな」「薬の影響かな」と考えてしまいがちです。もちろんそういう原因もあります。でも、水分不足も意外と大きく影響しているものなんです。だから食事と合わせて、水分の重要性もぜひ考えていただきたいと思います。
「食べられているか」と同じくらい「飲めているか」を見る
極端な話ですが、食べ物を数日食べなくても、人はすぐには死にません。でも水分は違います。何もしなくても1日に500ml以上の水分が体から失われていくわけですから、水分を摂取しないと体内の水分がどんどん足りなくなって、衰弱し、最悪の場合は命に関わります。
だからこそ、在宅で高齢者を見守る時には「ちゃんと食べられているか」と合わせて「ちゃんと飲めているか」も見ていただきたいんです。食事の量ばかりに目が向きがちですが、水分は食事以上に命に直結する部分があります。
脱水の詳しい症状や対応については、こちらの記事も参考にしてください。
食事からも水分は摂れる
意外と見落とされがちですが、水分は飲み物だけでなく食事からも摂れます。汁物やスープ、水分の多いおかず、果物など、食事の中にも水分はたくさん含まれています。だから、しっかり食事を食べることは、水分補給という意味でもとても大切なんです。
食欲がなくて食事量が減ると、その分だけ食事から摂れる水分も減ってしまいます。そういう意味でも、栄養バランスが取れていて、汁物や水分の多いメニューも含まれた食事を確保することは、脱水予防の観点からも役立ちます。一人暮らしで食事の準備が難しい場合は、栄養バランスの取れた宅配弁当を活用するのも一つの方法です。
高齢者向けの宅配弁当については、こちらの比較記事もご覧ください。
まとめ
高齢者の水分不足は、ぼんやりする、反応が鈍くなる、排泄トラブルが増えるなど、さまざまな不調につながります。1日1,500mlを目安に、本人が無理なく飲めるものを見つけて、こまめに水分を取ってもらうことが大切です。
トイレが近くなる、むくむ、むせ込むといった理由で水分を控えてしまう方は多いですが、不感蒸泄で水分は常に失われ続けています。控えることの方がよっぽどリスクが高いんです。
在宅で高齢者を見守る時は、「ちゃんと食べられているか」と「ちゃんと飲めているか」をセットで見ていきましょう。気になることがあれば、担当のケアマネジャーや主治医に相談してみてください。


