高齢者の低栄養を改善する方法|「カロリーより栄養価」古い常識の見直しを解説

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「しっかり食べているつもりなのに、なんだか痩せてきた」「高齢の親の食事が、いつも同じようなものばかり」。こうした状況は、低栄養のサインかもしれません。理学療法士・介護支援専門員として高齢者に関わってきた経験から、高齢者の低栄養を改善する方法について、最近の栄養の考え方も交えてお話しします。
実は、低栄養の背景には「昔の栄養の常識」が関係していることが少なくありません。ここを見直すことが、低栄養の改善につながります。
高齢者の低栄養はなぜ怖いのか
低栄養とは、体を維持するために必要な栄養が足りていない状態のことです。高齢者にとって、これは決して軽い問題ではありません。
低栄養が進むと、筋肉が減って体を動かす力が弱まり、フレイルやサルコペニアといった状態につながります。これらが進むと、転倒や骨折、そして要介護状態のリスクが高まります。実際、低栄養に該当した高齢者は、そうでない人に比べて要介護認定を受けるリスクが高いことが調査でも報告されています。高齢者では、太りすぎよりも痩せすぎの方が、かえって死亡リスクが高くなるという指摘もあるほどです。
「歳をとったら小食でいい」「あっさりしたものだけで十分」という考えは、実は危険なんです。高齢者こそ、しっかり栄養を摂る必要があります。
「カロリー」ではなく「栄養価」で考える
低栄養を考えるうえで、まず切り替えてほしいのが「カロリーで考える」から「栄養価で考える」への発想の転換です。
最近は若い人もそうですが、食事をカロリーで捉える傾向が強いように感じます。でも、カロリーが足りていても、栄養価で見ると全然足りていない、ということがよくあるんです。特に不足しがちなのが、たんぱく質、そしてビタミンやミネラルです。
ごはんとふりかけ、麺類だけになっていませんか
日本人なので、お米が好きなのは自然なことです。でも、手軽だからと、お米にふりかけをかけるだけで三食済ませていたり、それが毎日続いていたりすると、栄養は大きく偏ります。うどんやそばなどの麺類で済ませているケースも多いですが、他の副菜や主菜、具がないと、ほとんど炭水化物と塩分だけ、という状態になりやすいんです。
こういう食事は、お腹は満たされるのでカロリー的には足りているように見えます。でも、体をつくるたんぱく質や、体の調子を整えるビタミン・ミネラルがごっそり抜けている。これが低栄養の典型的なパターンです。
たんぱく質は「摂りすぎ」より「不足」の方が問題
低栄養の改善で一番のカギになるのが、たんぱく質です。ところが、ここで昔の栄養の常識が邪魔をすることがあります。
「卵は1日1個まで」は昔の考え方
少し古い考え方では、「卵は1日1個まで」とよく言われていました。コレステロールを気にしてのことです。その影響で、たんぱく質を摂りすぎるとむしろ体に悪いのではないか、と考えている方が、今でもまだまだ多くいらっしゃいます。
でも、最近の考え方は違います。たとえば卵は、体づくりや体の維持に必要なアミノ酸などの栄養素が、満遍なくバランスよく入っている優秀な食品です。健康な方であれば、コレステロールを過度に気にするよりも、バランスよく栄養が摂れるという利点の方が大きいと言われるようになってきました。食事から摂るコレステロールが血液中のコレステロール値に与える影響は、以前考えられていたほど大きくないことも分かってきています。
もちろん、脂質異常症などで医師から指導を受けている方は、その指示に従ってください。ただ、健康な高齢者が「卵は1日1個まで」と自分で制限して、結果的にたんぱく質不足になっているとしたら、それはもったいないことです。
高齢者に必要なたんぱく質の目安
厚生労働省の食事摂取基準では、高齢者のたんぱく質の推奨量は、65歳から74歳で男性60g、女性50gとされています。フレイル予防の観点からは、体重1kgあたり1.0gから1.2gが目安とも言われ、体重50kgの人なら1日50gから60gが必要になります。
これを摂るには、肉・魚・卵・大豆製品・乳製品といったたんぱく質源を、毎食欠かさず取り入れることが大切です。1日のうち1食だけたくさん食べるより、3食に分けてこまめに摂る方が、体は効率よく使えます。「毎食、手のひらに乗るくらいのたんぱく質を」と意識するといいでしょう。
ただし、腎臓病などで腎機能が低下している方は、たんぱく質の摂りすぎに注意が必要です。この場合は必ず主治医の指示に従ってください。
「健康に良さそう」に潜む糖分の落とし穴
もう一つ気をつけたいのが、糖分の摂りすぎです。
ドラッグストアやスーパーに行くと、健康に良さそうなドリンクや、「健康にいい」と書かれた食品がたくさん並んでいます。特定保健用食品のように、確かに体に良い面があるものもあります。でも、その食品を構成する要素に分けてみると、砂糖や加糖ぶどう糖液糖が主成分だった、ということが実は少なくありません。
「健康にいい」というイメージだけで選んでしまうと、知らないうちに糖分ばかり摂ってお腹が膨れて、肝心のたんぱく質やビタミンが摂れない、ということになりがちです。パッケージのイメージではなく、原材料表示を見る習慣をつけると、こうした落とし穴を避けられます。
古い栄養の常識が低栄養を招いていることも
現場で高齢者と接していて感じるのは、私たち若い世代が持っている栄養の知識と、昔の栄養に対する考え方が、少し違っているということです。そして、その誤解から低栄養になってしまっている側面が、確かにあると思います。
以前、ひざの軟骨に効くサプリメントを飲んでいるから、しらすや煮干しを食べてはいけないと思い込んでいる方に出会ったことがあります。骨の成分が摂りすぎになってしまうから、という理由でした。私は栄養士ではないので強くお伝えすることはできませんでしたが、これなどはまさに、栄養に関する誤解が、本来摂れるはずの栄養(しらすや煮干しのカルシウムやたんぱく質)を遠ざけてしまっている例です。
実は、厚生労働省の資料でも、高齢者の低栄養の要因の一つとして「栄養に関する誤認識」や「医療者の誤った指導」が挙げられています。つまり、これは私の個人的な印象というだけでなく、公的にも指摘されている問題なんです。良かれと思っている食の制限が、実は低栄養を招いているかもしれない。一度、思い込みで避けている食品がないか、見直してみることをおすすめします。
いろいろな食材を満遍なく食べてきた人は強い
これは私が現場で感じてきた、一つの印象的な話です。他の記事でも書いたのですが、昔から川魚を食べる習慣があった人は、高齢者になっても、なんとなく体ががっしりしているような印象があります。
おそらく、川の魚を食べるという食習慣があった人は、いろいろな栄養がある食べ物を、あまり抵抗なく満遍なく食べてきたのではないかと感じます。特定の食材だけを食べるのではなく、手に入るいろいろなものを幅広く食べる。この「満遍なく食べる」という習慣が、結果的に栄養バランスを支えていたのだと思います。
あわせて、川魚のような食べ物を身近で手に入れられる人は、自然の中を逞しく、農業や自然に近いところで生きてきた人たちです。そういう方は足腰もしっかりしていて、いろいろなことを億劫に思わず生きておられるような印象があります。食べることと、体を動かすこと、そして生活への意欲。これらは全部つながっているのだと感じます。低栄養の改善も、食事だけでなく、活動や生活全体で考えていくことが大切です。
低栄養を改善する食事のポイント
ここまでの話をふまえて、低栄養を改善するための食事のポイントをまとめます。
まず、カロリーだけでなく栄養価で考えること。ごはんやふりかけ、麺類だけで済ませず、たんぱく質源(肉・魚・卵・大豆製品・乳製品)を毎食取り入れること。卵などを古い常識で制限しすぎないこと。糖分の多い「健康そうな食品」に頼りすぎないこと。そして、思い込みで避けている食材がないか見直して、いろいろな食材を満遍なく食べることです。
とはいえ、これだけの栄養バランスを毎食自分で考えて用意するのは、なかなか大変です。特に一人暮らしや、調理が負担になってきた高齢者にとっては簡単ではありません。そういうときは、管理栄養士が栄養バランスを設計した宅配弁当を活用するのが、とても有効です。たんぱく質やビタミン、ミネラルがしっかり計算された食事を、手軽に摂ることができます。低栄養の改善には、まず「きちんと栄養の入った食事を、無理なく続けられる形」を整えることが第一歩です。
栄養バランスの取れた宅配弁当については、こちらの比較記事もご覧ください。
まとめ
高齢者の低栄養は、フレイルや要介護状態につながる怖い問題です。改善のカギは、カロリーではなく栄養価で食事を考えること、そしてたんぱく質をしっかり摂ることです。「卵は1日1個まで」といった古い常識や、思い込みによる食の制限が、知らないうちに低栄養を招いていることもあります。
いろいろな食材を満遍なく食べること、そして食べることと体を動かすことをセットで考えることが、低栄養の改善につながります。毎食の栄養バランスを整えるのが大変なときは、栄養バランスの取れた宅配弁当を上手に活用してみてください。
体重が減ってきた、食が細くなってきたなど気になることがあれば、早めに主治医や管理栄養士、担当のケアマネジャーに相談してくださいね。

