認知症予防と食事の本当の関係|「毎日違うメニュー」だけでは足りない理由を専門家が解説

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「毎日違うメニューを食べると認知症予防になる」という話を聞いたことがある方は多いと思います。確かにその通りなんですが、私は介護の現場に関わってきて、それだけでは足りないんじゃないかと感じるようになりました。
理学療法士・介護支援専門員、施設管理者として高齢者の食事に関わってきた経験から、認知症予防と食事の本当の関係についてお話ししたいと思います。
「毎日違うメニュー」だけでは刺激にならない
バリエーション豊かな献立が脳に良いというのは、よく言われることです。でも私は、それはあくまでインプットだけでなくアウトプットもある時に成り立つことなんじゃないかと思っています。
考えてみてください。与えられたものをただ無言で食べて、それでまたぼーっとして、また次のご飯が来て、何も言葉を発することも、感動を伝えることもなく食べて、そして寝る。こんな状態だったら、いくらバリエーション豊かな献立が提供されたとしても、本当に刺激があるとは言えないと思うんです。
認知症には刺激が大切だとよく言いますよね。でも最近感じるのは、刺激を受けて、それを認知して、それに対して反応する。この一連の流れがあって初めて認知機能が保たれるんじゃないかということです。受け取るだけ、食べるだけでは不十分で、そこに「反応する」というアウトプットが加わることが大切なんだと思います。
食事のときに「何かを引き出す工夫」を
そう考えると、食事の時にはできるだけ何かを引き出す工夫があった方がいいような気がしています。難しいことをする必要はありません。食事をきっかけに、ご本人から何か反応を引き出すということです。
独居の場合の工夫
一人暮らしの場合はなかなか難しいこともありますが、たとえば食事の感想を一言、日記みたいに書いてもらうのはどうでしょうか。あるいは、お弁当を届けてくれる宅配サービスのお弁当屋さんへのお手紙という形でもいいと思います。「今日のおかずは美味しかったです」というような一言でも、感じたことを言葉にしてアウトプットすることに意味があります。
介護で関わる場合の工夫
介護で関わる立場であれば、「今日のお昼は何でしたか?」とか「最近なんか美味しいもの食べましたか?」と聞いてみるのもいいと思います。食事の内容を思い出して言葉にするという作業は、それだけで記憶を呼び起こし、反応を生み出します。こうしたやりとりの積み重ねが認知機能の維持につながると感じています。
「料理をする」ことは認知機能の宝庫
もし可能であれば、料理を作るということを少しでも取り入れられると、これはとても良い認知症予防になります。料理という行為を手順に分けて考えてみると、その理由がよく分かります。
まず自分で何を作るか手順を考える。必要な材料をそろえる。それを順序立てて調理していく。上手に盛り付ける。味わいながら食べる。それから洗い物をして、汚れがない状態に持っていく。食器が乾いたら定位置に収納する。
こんな風に手順を分けて考えていくと、料理というのは日常生活に必要な認知機能や遂行能力をたくさん使う行為だということが分かりますよね。計画を立てて、順序立てて実行して、片付けまでやり遂げる。これだけのことを一度にこなすわけですから、料理を続けることそのものが認知機能の維持につながると思います。
もちろん、火を使うことや包丁を使うことに不安がある場合は、無理に料理をする必要はありません。安全が第一です。盛り付けだけ手伝ってもらう、食器を並べてもらうなど、できる範囲で食事の準備に関わってもらうだけでも意味があると思います。
一人で引きこもると刺激も反応もなくなる
認知症予防という観点で一番心配なのは、一人で引きこもってしまって、刺激も反応もない毎日を過ごしてしまうことです。誰とも話さず、感じたことを言葉にする機会もない。そういう生活が続くと、認知機能はどうしても低下しやすくなります。
そういう意味では、もし一人暮らしになってしまったり、なかなか人に関わる機会がない場合は、デイサービスなどに通うことをおすすめしたいです。その時だけでもいろいろな話をして、ちょっと刺激を受けて、その刺激に対して反応する。これは認知機能を保つうえでとても良いことだと思います。
食事の場面でも、デイサービスでは献立をきっかけに会話が生まれたり、他の利用者やスタッフとのやりとりが自然に発生したりします。大声でぺちゃくちゃ話すわけではなくても、食前や食後のちょっとした会話が、孤食では得られない刺激になります。
在宅と施設、どちらが認知症予防に良いか
「在宅で暮らすのと施設に入るのと、どちらが認知症予防に良いですか」と聞かれることがあります。これは一概には言えなくて、その方の状況によると思います。
介護施設に入ってしまうと、それはそれでなかなか刺激が少なく、感動も少ない日々になってしまうことがあります。決まった時間に決まった流れで過ごすので、変化に乏しくなりがちなんですね。そういう意味では、在宅で暮らせるならその方が良いケースが多いと感じています。
ただ、もし在宅でも家に引きこもってしまっているようであれば、話は別です。誰とも関わらず一人で過ごしているくらいなら、施設で介護を受ける方が人との関わりが多くて、充実した生活になる方もいると思います。大事なのは「在宅か施設か」という形ではなく、その人にとって刺激と反応のある生活が送れているかどうかだと思います。
認知症予防に良いとされる栄養素も大切に
ここまで「食事を通じた刺激と反応」の話をしてきましたが、もちろん食事の中身も大切です。認知症予防に良いとされる栄養素を意識して摂ることも、合わせて取り組みたいところです。
青魚に含まれるDHA・EPA、緑黄色野菜や果物に含まれる抗酸化ビタミン、大豆製品など、バランスよくいろいろな食材を摂ることが基本になります。一人暮らしだとどうしても同じものばかりになりがちなので、栄養バランスの取れた宅配弁当を活用するのも一つの方法です。毎日違うメニューが届くことで、自然といろいろな食材を口にできます。
そして大切なのは、その食事を「美味しかった」「これは何だろう」と感じて、誰かに伝えたり書き留めたりすること。栄養というインプットと、感じて反応するというアウトプットの両方がそろって、はじめて認知症予防につながるんだと思います。
栄養バランスの取れた宅配弁当については、こちらの比較記事もご覧ください。
まとめ
認知症予防と食事の関係というと、つい「何を食べるか」に目が向きがちです。もちろん栄養も大切なんですが、私が現場で感じてきたのは、「食事を通じてどれだけ刺激を受けて、それに反応できているか」という部分が同じくらい大切だということです。
毎日違うメニューを食べる。その感想を言葉にする。誰かと食事について話す。できれば料理にも関わる。こうした一つひとつが、認知機能を保つための刺激と反応になります。一人暮らしで難しい部分があれば、宅配弁当の工夫やデイサービスの活用など、できることから取り入れてみてください。
食事のことで悩んだら、担当のケアマネジャーに相談してみるのもおすすめです。その方に合った形で、食事を通じた刺激のある生活を一緒に考えてもらえると思います。


