介護食とは?種類と選び方の基本|「必要な部分だけ補う」考え方を専門家が解説

この記事はプロモーションが含まれます。
「介護食を用意してあげたいけど、何をどう作ればいいのか分からない」「介護食ってミキサーでドロドロにしたもののこと?」。こうした疑問を持つ方は多いと思います。理学療法士・介護支援専門員として高齢者の食事に関わってきた経験から、介護食とは何か、その種類と考え方の基本を分かりやすく解説します。
実は、介護食を考えるうえで一番大切なのは「その人の何が大変なのかを見極めること」なんです。ここを理解すると、介護食の選び方がぐっと分かりやすくなります。
介護食とは?
介護食という言葉は、実ははっきりした一つの定義があるわけではなく、造語のような面もあります。だから、人によって思い浮かべるものが違うこともあります。
ここでは「介護が必要な人に向けた、食べやすく工夫した食事」という意味で考えていきます。ポイントは、この「介護が必要な部分」がどこなのかに着目することです。ここに注目すると、介護食を細かく分けて考えることができます。
大切なのは、介護が必要になったからといって、すべての人がミキサーでぐちゃぐちゃにした食事を食べなければいけないわけではない、ということです。ここを誤解している方が本当に多いんです。
「食べる」を細かく見ると必要な工夫が分かる
「食べる」という行為は、実はいろいろな段階と機能に分かれています。食べ物を認識して、口に運んで、噛んで、飲み込む。この一連の流れのどこが大変なのかによって、必要な工夫が変わってきます。
たとえば、歯が欠損して噛めなくなってしまった人であれば、歯がなくても歯ぐきや舌ですりつぶせるような、やわらかい食事にすれば食べられます。一方、飲み込むのに時間がかかったり、誤嚥するリスクが高い人に対しては、食べ物が口の中で散らばったり、口にくっついて飲み込みを邪魔したりしないように、とろみをつけた食事が向いています。
このように、その人が難しくなっている機能の部分だけを補うという考え方が、介護食ではとても大切です。噛むのが苦手ならやわらかく、飲み込むのが苦手ならまとまりやすく。困っているところだけをピンポイントで工夫すればいいんです。
介護食の主な種類
介護食には、大まかに以下のような段階があります。市販品を選ぶときの参考にもなります。
きざみ食
食べ物を細かく刻んで食べやすくした食事です。噛む力が弱くなってきた方向けです。ただし、細かく刻むと口の中で散らばりやすく、かえって飲み込みにくくなる場合もあるので、飲み込む力が落ちている方には向かないこともあります。あんかけにするなどのまとまりの工夫が必要です。
やわらか食(ソフト食)
歯ぐきや舌でつぶせるくらいのやわらかさに調理した食事です。形はある程度保たれているので、見た目も楽しめて、噛む動作もある程度残せます。噛む力が弱くなってきたけれど、飲み込む力はある程度保たれている方に向いています。
ミキサー食・ペースト食
食材をミキサーにかけて、なめらかなペースト状にした食事です。噛むことがほとんどできない方向けです。飲み込みやすい一方で、見た目や食感が失われやすいという面があります。
ゼリー食・ムース食
ゼリーやムースのように、まとまりがあって飲み込みやすく固めた食事です。飲み込む力がかなり低下している方向けで、誤嚥のリスクが高い方に使われます。
とろみをつけた飲み物
水やお茶などのさらさらした液体は気管に入りやすいので、とろみ調整剤でとろみをつけます。とろみの濃さは薄い・中間・濃いの段階があり、その人の状態に合わせて選びます。
市販品の分類マークも参考になる
市販の介護食品には、選ぶ目安になる分類マークがついているものがあります。日本介護食品協議会の「ユニバーサルデザインフード」は、かたさや粘度で「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の4段階に分けられています。農林水産省の「スマイルケア食」は、栄養補給が必要な方向けの青マーク、噛むことが難しい方向けの黄マーク、飲み込むことが難しい方向けの赤マークで表示されています。市販品を選ぶときは、こうしたマークを目安にすると分かりやすいです。
食形態の種類については、こちらの記事でも詳しく解説していますのでご覧ください。
→【高齢者の食事形態の種類一覧|きざみ食・やわらか食・ミキサー食の違いを解説】
「必要な部分だけ補う」ことが介護予防につながる
ここが、この記事で一番お伝えしたいところです。
その人が難しくなっている部分だけを補うという考え方は、実は介護予防の観点でもとても重要です。困っている機能だけを補って、まだ残っている能力(残存能力)を活かすことで、できるだけ長く自分の力で食事を楽しめるようになるからです。
極端な話をすると、介護が必要になったからといって、なんでもかんでもフードプロセッサーでぐちゃぐちゃにしたものしか与えない、という対応をしてしまうと、どうなるでしょうか。その人は噛むことをしなくなります。ただ飲み込むだけになってしまうんです。すると、噛む機能はどんどん低下していきます。
それに、食事は食べるだけのものではありません。この食材は何を使っているのか、彩りはきれいか、美味しそうか。そういう見た目や食欲への働きかけも、食事の大切な要素です。ぐちゃぐちゃにしてしまうと、そうした刺激がなくなって、食べる楽しみも、それに関わる機能も失われていきます。
お年寄りや中高年の方の中には、「食べられなくなったら終わり」というような考え方を持っている方もいます。でも、食べるという行為にはいろいろな段階と機能があるので、どこが大変なのか、誤嚥などのリスクが高いのかを細かく見ていけば、必要以上に食形態を落とさずに済むことも多いんです。誰だって、できるだけ形があって、味もしっかりした、美味しそうな食べ物を食べたいですよね。その気持ちは、介護が必要になっても同じです。
食形態は「下げるのは簡単、上げるのは大変」
介護施設などでよく言われることですが、食形態は下げるのは簡単でも、そこから上げるのは大変です。
安全を第一に考えて、一度ミキサー食やペースト食のように、噛んだり飲み込んだりが非常に楽な形態に変えてしまうと、その後で形のあるものにレベルアップしていくのには、慎重な判断が必要になります。しかも、楽な形態を続けている間に、その方の噛む能力はどんどん落ちていくので、余計に難しくなってしまうんです。
もちろん、誤嚥のリスクが高くて危険な場合は、安全を最優先に食形態を下げる判断が必要です。ただ、「なんとなく心配だから」という理由だけで安易に下げてしまうと、かえってその人の食べる力を奪ってしまうことがあります。これは実は、専門的な学会の分類基準でも、状態に応じて段階を上げていくことが基本とされていて、低すぎる形態は食欲を起こさせないことがあるとも指摘されています。安全と、食べる力の維持のバランスを取ることが大切なんです。
介護食に迷ったら誰に相談すればいい?
介護食を検討する段階の方は、おそらく要支援や要介護の認定がつくくらいのレベルの方が多いと思います。相談先を状況別に整理します。
介護サービスを利用している場合
介護保険や総合事業などで介護サービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーや、サービス先の専門知識がある人に、食事をどうしたらよいか相談しましょう。デイサービスやショートステイを利用していれば、そこでの食事の様子から、どんな食形態が合っているかアドバイスをもらえることもあります。
介護サービスを利用していない場合
まだ介護サービスを利用していない方の場合は、かかりつけ医や、かかりつけの歯医者さんでも相談に乗ってくれます。特に歯医者さんは、噛む機能や口の状態を見てくれるので、身近な相談先として頼りになります。
詳しい検査が必要な場合
もっと詳しい検査となると、嚥下の評価をしてくれる専門の歯科医や、言語聴覚士が在籍している医療機関の方が、詳しく検査や状況の把握を行ってくれます。特に、ご飯を食べられるか食べられないかの瀬戸際のような状態であれば、きちんと専門的な検査を受けて判断した方がいいです。無理に食べさせて誤嚥性肺炎になってしまっては大変ですから。
そこまで切迫していない場合は、まずは一般的にどんな風にしているのか、地域で関わりがあるところで相談してみるのがおすすめです。
介護食は宅配サービスも活用できる
介護食を毎食手作りするのは、家族にとって大きな負担です。特にやわらか食やムース食は、調理に手間も技術も必要です。そこで活用したいのが、介護食に対応した宅配弁当サービスです。
やわらか食やムース食に対応した宅配弁当なら、その人の状態に合った食形態のものを、電子レンジで温めるだけで用意できます。管理栄養士が栄養バランスも考えてくれているので、安心です。冷凍でストックできるものが多いので、必要なときに使えるのも便利です。
やわらか食に対応した宅配弁当については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
まとめ
介護食とは、介護が必要な人に向けて食べやすく工夫した食事のことです。大切なのは、その人の「何が大変なのか」を見極めて、困っている機能だけをピンポイントで補うことです。介護が必要になったからといって、すべてをミキサー食にする必要はありません。
必要な部分だけを補って残っている能力を活かすことは、介護予防にもつながり、食べる楽しみを長く保つことにもなります。食形態は下げるのは簡単でも上げるのは大変なので、安全と食べる力の維持のバランスを慎重に考えることが大切です。
介護食に迷ったら、担当のケアマネジャーやかかりつけ医、歯医者さん、言語聴覚士などに相談してください。そして、手作りの負担が大きいときは、介護食対応の宅配弁当も上手に活用してみてくださいね。

