高齢者のカルシウムとビタミンD|骨を強くしても転倒は防げない、運動習慣も大切

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「歳をとって骨が弱くなるのが心配」「骨粗しょう症と言われた」。高齢の方やそのご家族から、本当によく聞く悩みです。テレビCMでも「いつのまにか骨折」といった啓発が行われていて、関心の高いテーマですよね。
理学療法士・介護施設管理者として、骨折後のリハビリや、入居中に骨折してしまったご利用者などにも数多く携わらせていただいた経験から、高齢者の骨を守るためのカルシウムとビタミンD、そして食事と運動について、現場の視点も交えてお話しします。
先にお伝えしておくと、この記事は一般的な情報、個人の見解をお伝えするものです。骨粗しょう症の診断や治療については、必ず主治医の指示に従ってください。
高齢者の骨折は「寝たきり」への入り口
まず、なぜ高齢者の骨がこれほど心配されるのか。それは、骨折が高齢者の生活を大きく変えてしまうからです。内閣府の資料によると、65歳以上の高齢者が介護が必要になった原因のうち、骨折・転倒は全体の4番目を占めています。転んで骨折し、それをきっかけに動けなくなって、そのまま寝たきりや要介護になってしまう。これは介護の現場で本当によく見る流れです。
骨がもろくなる骨粗しょう症は、進行しても最初は自覚症状がほとんどありません。特に背骨(胸椎・腰椎)の骨折は、痛みを感じないまま起きていることも少なくないんです。
実際に高齢者のリハビリに携わっていると、本当に、気づかないうちに背骨が骨折していたという方がいらっしゃいます。腰が痛くて病院に行ったら、レントゲンで2か所も3か所も、以前に骨折した跡が見つかった、という状態の方も、何件も見てきました。ご本人は骨折した自覚がまったくないんです。それくらい、骨粗しょう症による骨折は、静かに進んでいきます。
なぜ骨が弱くなるのか|カルシウムとビタミンDの関係
骨が弱くなる原因の一つに、カルシウムとビタミンDの関係が挙げられます。これは事実だと思います。
カルシウムは骨の主な材料です。そして、そのカルシウムが腸から吸収されるのを助けるのが、ビタミンDです。つまり、カルシウムをしっかり摂っても、ビタミンDが足りないと、うまく体に取り込めません。この2つはセットで考える必要があるんです。
高齢になると、腸でのカルシウムの吸収力が落ちたり、骨を壊す働きが強まったりして、骨が弱くなりやすくなります。また、若い頃にカルシウムやビタミンDが不足していたことも、一つの要因になります。骨は成長期に最もつくられ、その後は少しずつ減っていくので、若い頃の蓄えが影響してくるんです。
特に女性の場合、出産に伴って、お腹の赤ちゃんの体をつくるためにカルシウムが送られ、母体のカルシウムが減った状態になることも指摘されています。加えて、閉経後は骨を守る女性ホルモンが減るため、女性は男性より骨粗しょう症になりやすい傾向があります。
理学療法士として思う「骨を強くする」だけでは足りないこと
ここからは、リハビリの現場で長く高齢者を見てきた私の、個人的な考えも含めてお話しします。
骨密度を測定して、骨密度が低いと、骨粗しょう症の診断基準の一つになります。そういう状態だと、整形外科では治療として、注射などで骨密度を高めることを勧められることがあります。何回かに分けて、長期間、注射で治療を行っていくわけです。
確かに、こうした治療で骨密度は改善するのかもしれません。ただ、正直に言うと、それが生活レベルに落とし込んだときに、どれくらい効果があるのかは、私にはよくわからない部分があります。というのも、骨密度が少し上がったからといって、骨折をしなくなるわけではないからです。ふらっとして転倒してしまったとき、半年注射をして骨密度がちょっと上がったから骨折せずに済んだ、ということは、実際にはなかなか検証できません。転倒すれば、多少骨が強くなっていても、やっぱり骨折はしてしまうものなんです。
これは治療を否定しているわけではありません。医師の判断で必要な治療は、きちんと受けるべきです。ただ、理学療法士としてお伝えしたいのは、「骨を強くすること」と同じくらい、いえ、それ以上に「そもそも転ばないこと(転倒予防)」が大切だということです。骨折は、骨のもろさと転倒が重なって起こります。だから、骨の材料になる栄養をしっかり摂ることと、転ばない体づくり、転ばない環境づくりを、両輪で進めていくことが重要だと考えています。
骨を守る食事|カルシウムとビタミンDが摂れる食材
高齢になってからカルシウムやビタミンDを摂ることも、もちろん必要です。ただ、骨に直接すぐ効果が出るというものではないので、普段からコツコツ、いろいろな栄養と一緒に摂っていくことが大切です。
カルシウムを多く含む食材
カルシウムは、牛乳・乳製品、小魚、豆腐などの大豆製品、小松菜などの緑黄色野菜、ひじきなどの海藻に多く含まれます。牛乳はカルシウムの吸収率が良い食材として知られています。普段から、小魚を丸ごと食べたり、豆腐を食べたり、小松菜を食べたりと、いろいろな食材から摂るのがおすすめです。
ビタミンDを多く含む食材
ビタミンDは、サケ・サンマ・サバ・ブリ・うなぎなどの魚類、きくらげ・干し椎茸・しめじなどのきのこ類に多く含まれます。カルシウムを摂るときは、このビタミンDを一緒に摂ることで、吸収が良くなります。魚ときのこを意識して食卓に取り入れると良いですね。
骨の形成には、カルシウムやビタミンDだけでなく、骨へのカルシウムの取り込みを助けるビタミンKや、たんぱく質なども関わっています。だからこそ、特定の栄養だけを狙うのではなく、たんぱく質やビタミン類など、いろいろな栄養も一緒に摂れる形が理想です。
私のおすすめは「食べる煮干し」
骨のための食材として、私が個人的に一番おすすめしたいのが、そのまま食べる煮干しです。
煮干しは、カルシウムやたんぱく質などをしっかり摂れる、優れた栄養源です。しかも、丸ごと食べられるので、小魚のカルシウムを余すことなく摂れます。ちょっと硬いと感じる人もいるかもしれませんが、実はこの「硬さ」も良いところなんです。硬いものを噛むことは、咀嚼の練習になります。噛む力を保つことは、食べる力を維持することにもつながるので、一石二鳥なんです。私は、煮干しは高齢者にとって最高の栄養源だと思っています。
ただし、噛む力が弱くなっている方には、煮干しは硬すぎることもあります。「煮干しは硬くて食べられない」という方は、しらすでも良いと思います。

しらすなら、やわらかくて食べやすく、ごはんにのせたり、和え物にしたりと使いやすいです。ご本人の噛む力に合わせて、無理のない形で小魚を取り入れてみてください。塩分が気になる方は、減塩タイプや、塩抜きしたものを選ぶと安心です。
食事と一緒に「日光浴」と「運動」を
骨の形成には、食事だけでなく、ビタミンDと日光浴も欠かせません。実は、ビタミンDは食事から摂るだけでなく、日光(紫外線)を浴びることで、体の中でもつくられるんです。屋内で過ごす時間が長い高齢者は、ビタミンDが不足しがちなので、適度に日光を浴びることが大切です。
とはいえ、長時間の直射日光は肌へのダメージになるので、適度で十分です。冬なら30分から1時間くらい散歩に出かけたり、夏なら暑さを避けて木陰で30分ほど過ごしたりするだけでも効果があると言われています。
私のおすすめは、朝などに日光を浴びながら散歩をしたり、体操をしたりする習慣をつけることです。これができると、本当に最高だと思います。日光を浴びてビタミンDをつくりながら、運動で足腰の筋力を鍛えて転倒を予防し、生活リズムも整う。骨を守るという観点で、これ以上ない習慣です。骨のための栄養を意識して摂りながら、こうした習慣を組み合わせられると理想的です。
いろいろな食材をバランスよく摂るのが難しいときは
ここまで、小魚・豆腐・小松菜・魚・きのこなど、いろいろな食材を紹介してきました。ただ、これらをバランスよく毎日の食事に取り入れるのは、一人暮らしや高齢のご夫婦だけの世帯では、なかなか大変です。特に、魚料理や野菜の副菜を毎食用意するのは、買い物も調理も負担が大きいものです。
そういうときは、管理栄養士が監修した宅配弁当を活用するのも一つの方法です。魚を使った主菜や、野菜・豆腐・海藻を使った副菜など、骨の健康に役立つ食材を含んだバランスの良い献立が、手間なく用意できます。自分ではつい同じものに偏ってしまう方も、多様な食材を無理なく取り入れられます。煮干しやしらす、牛乳などを自分でプラスしつつ、食事の土台を宅配弁当で整える、という使い方もおすすめです。
栄養バランスを重視した宅配弁当については、こちらの比較記事もご覧ください。
まとめ
高齢者の骨の健康には、カルシウムと、その吸収を助けるビタミンDが欠かせません。小魚・豆腐・小松菜・牛乳などのカルシウム、魚やきのこのビタミンDを、いろいろな食材からバランスよく摂ることが大切です。特に、そのまま食べる煮干しは、カルシウムもたんぱく質も摂れて咀嚼の練習にもなる、おすすめの食材です。硬ければしらすでも構いません。
そして、理学療法士としてお伝えしたいのは、骨を強くすることと同じくらい、「転ばないこと」が大切だということです。骨のための栄養を摂りながら、日光浴を兼ねた散歩や体操で、足腰を鍛えて転倒を防ぐ。この両輪で、骨折から体を守っていきましょう。骨粗しょう症の治療を受けている方は、主治医の指示に従いながら、食事と運動も大切にしてください。
食事や運動のことで気になることがあれば、担当のケアマネジャーや主治医、管理栄養士に相談してみてくださいね。

