認知症の方の食事|困りごとへの対応と独居の現実を専門家が解説

認知症の方の食事|困りごとへの対応と独居の現実を専門家が解説

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認知症の方の食事は、ご家族にとって悩みの尽きないテーマです。「食べてくれない」「食べ方がわからなくなっている」といった日々の困りごとから、独居の方の食事をどう支えるかという難しい問題まで。理学療法士・介護支援専門員として認知症の方とそのご家族に関わってきた経験から、認知症の方の食事について、現場の現実も含めてお話しします。

認知症の方によくある食事の困りごと

認知症が進むと、食事の場面でさまざまな変化が現れます。まずは代表的なものを知っておくと、対応のヒントになります。

食べ物だと認識できない(失認)

目の前に食事を用意しても、なかなか食べ始めない。これは「失認」という症状で、目の前のものが食べ物だと認識できていない可能性があります。こういうときは、匂いをかいでもらいながら「これはお味噌汁ですよ」と声をかけたり、最初の一口を介助したり、食器を手に持たせたりして、食べ物だと認識するきっかけを手伝ってあげると良いと言われています。

食べ方がわからなくなる(失行)

箸やスプーンの使い方、口に運ぶ動作など、今まで当たり前にできていた食事の手順がわからなくなることがあります。これは「失行」という症状です。こういうときは、ご本人の目に入る位置で一緒に食事をすると、見よう見まねで食べられることがあります。一品ずつ出す、食器の数を減らすなど、情報量を減らして混乱を防ぐ工夫も有効です。

食事を拒否する

食事を勧めても食べてくれないこともあります。原因は、失認や失行のほか、気分の落ち込み、嚥下や口腔内のトラブル、薬の影響などさまざまです。ここで大切なのは、無理に食べさせようとしないことです。強く勧めたり理由を問いただしたりすると、食事の時間そのものが不快になり、かえって拒否が強まってしまいます。一食食べなかった程度では大きな影響はないので、毎食無理に食べさせようとしなくて大丈夫です。

認知症の方が食事を食べない理由については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

→【高齢者が食事を食べない理由と対処法|介護現場で見てきた6つのケース

家族と暮らしている場合は工夫で支えられる

ご家族と一緒に暮らしている場合は、こうした困りごとも、家族が食事を用意して、みんなと一緒に食べるという形で支えられることが多いです。一緒に食卓を囲むことで、見よう見まねで食べられたり、会話が食欲を引き出したりします。食事の準備が負担なときは、栄養バランスの取れた宅配弁当を活用して、家族の負担を減らしながら支える方法もあります。

難しいのは、認知症の方が一人暮らしをしている、独居のケースです。ここからは、現場で実際に直面してきた、独居の認知症の方の食事の現実についてお話しします。

独居の認知症|食事以前に安全の問題がある

軽度の認知症で、在宅で一人暮らしを続けている方は少なくありません。家の中で何とか生活はできていても、さまざまな危険を伴います。

火を使ったら消し忘れてしまう。包丁を持つのも危なっかしい。家の鍵を閉め忘れてしまう。そして、どこかに出て行って徘徊し、迷子になってしまうこともあります。食事を用意する以前に、まず生活の安全をどう守るかが大きな課題になるんです。

実際の現場では、親族の方や自治体の方々と協力して、玄関の鍵を外側からかけて、その鍵を関わる人たちだけがわかるボックスに入れて管理する、という形をとっているケースもあります。ご本人が外に出て事故に遭わないよう、やむを得ずこうした対応をとることがあるんです。ここまですると、火や包丁を使った調理を一人でしてもらうのは現実的ではありません。

独居の認知症の方の食事をどう確保するか

冷凍弁当を自分で温められるか

電子レンジで温めるだけで食べられる冷凍弁当は、選択肢の一つになります。ただし、これはご本人が電子レンジを操作できて、決まった時間に食べられることが前提です。認知症が進むと、冷凍庫に弁当があること自体を忘れてしまったり、温め方がわからなくなったりするので、独居では難しくなっていくことも多いです。

配達+安否確認をしてもらう

独居の認知症の方には、どちらかというと、食事を毎回配達してもらって、そのときに安否確認もしてもらうという形をとることが多いです。届けてくれる人が顔を見て、食べられているか、変わりはないかを確認してくれます。

ただ、正直にお伝えすると、お弁当屋さんもそこまで手が回らないことが多く、こうした対応まで協力してくれる配達サービスは、なかなか見つかりにくいのが実情です。特に、外から自宅の鍵を開けてお弁当を届け、また閉めて、ということを、介護保険の枠組みではなくお弁当屋さんのサービスとしてやってもらうとなると、業務も責任も大きく増えます。かなり無理をお願いすることになるので、簡単ではありません。

訪問介護やデイサービスで食事を提供する

配達が難しい場合は、訪問介護やデイサービスなどの介護サービスで食事を提供する形になります。ただ、ここにも壁があります。認知症だけだと、介護度がなかなか高く出ず、要介護2くらいまでにとどまることが多いんです。そうすると、使えるサービスの量に限りがあり、毎日何かしらのサービスを利用して3食を確保する、というのが難しくなります。

在宅を続けることが、本当に本人のためになるのか

ここまで来ると、必ずしも在宅で生活を続けることが、その人にとって良いことなのか、ということを考えなくてはいけない場面が出てきます。これは、とてもデリケートで、答えの出しにくい問題です。

居宅のケアマネジャーも、いろいろな工夫をしたり、地域の資源を探したりして、何とか在宅生活を支えようと頑張ります。でも、それでもたくさんの人にお世話になったり、時には持ち出しでボランティア的に協力してもらったりすることになり、支える側にとっても厳しいものがあります。

介護保険や高齢者支援の理念としては、「本人の望む生活を」とよく言われます。とても大切な考え方です。ただ、認知症が進行した状態で一人暮らしをすることを本人が望んだとしても、それはいろいろな意味で困難や危険を伴います。火事や事故、徘徊による行方不明、低栄養や脱水など、命に関わるリスクがあるんです。

だからこそ、ある段階からは、誰かが見守りやすい環境、たとえば施設やグループホームなどを選択肢に入れていく方が、現実的で、結果的にご本人の安全と安心につながることも多いと感じています。グループホームは認知症の方が少人数で共同生活をする場で、食事もスタッフと一緒に準備したり食べたりできるので、食事の確保と見守りを同時に叶えられます。

もちろん、これは「在宅をあきらめましょう」という話ではありません。ご本人やご家族の気持ち、状況は一人ひとり違います。ただ、在宅にこだわりすぎて、かえって危険な状態が続いてしまうよりは、早めに選択肢の一つとして施設やグループホームを知っておくことが、いざというときに落ち着いて判断する助けになります。

まずはケアマネジャーや地域包括支援センターに相談を

認知症の方の食事や生活について悩んだら、一人で抱え込まず、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してください。食事の工夫、使える介護サービス、地域の見守り資源、そして施設の情報まで、その方の状況に合わせて一緒に考えてくれます。

家族と暮らしていて食事の準備の負担を減らしたい場合は、栄養バランスの取れた宅配弁当を活用するのも一つの方法です。認知症の方本人が一人で使うのは難しくても、家族が用意する食事の一部として取り入れれば、負担を軽くしながら栄養を確保できます。

まとめ

認知症の方の食事では、失認・失行・食事拒否といった困りごとがあり、無理に食べさせず、認識や動作のきっかけを手伝う工夫が大切です。家族と暮らしている場合は、こうした工夫や宅配弁当の活用で支えられます。

一方、独居の認知症の方の場合は、食事以前に安全の確保が大きな課題となり、食事の配達や介護サービスにも限界があります。ある段階からは、施設やグループホームなど、見守りやすい環境を選択肢に入れることが、現実的でご本人のためになることもあります。理念としての「本人の望む生活」を大切にしながら、安全とのバランスを、関わる人みんなで考えていくことが大切です。

認知症の方の食事や生活で悩んだら、まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してくださいね。

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この記事を書いた人

秋山 和幸

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